ドミノピザの配達バイクに仕掛けられた、おじさんの声。普通のバイクのエンジン音か…と思いきや、よく聴いているとリズミカルに宣伝する、ラップのような声が混じってくる。
このバイクに出くわした人達は最初、何が起こっているか、よく分からないだろう。けれども、「何これ、ドミノドミノ言ってる!」と気付いた瞬間に、ゲラゲラと笑っている。
一見、ただの笑える映像だが、もしかするとこのバイクには、”面白い”だけではない意図が隠れているかもしれない。それは、このバイクが交通安全運動を自然とやっている、というところだ。
エンジンから声のするバイクに出会ったら、誰もが思わず減速し、「ん?」と耳を傾ける。
面白半分で、ついていく人もいるかもしれない。でも、このゆったりとした低速で走るピザバイクについていくことは、自然と飛ばしすぎない安全走行をすることにもなるのだ。
ちょっとした移動時間というのは、大抵退屈なものだ。何が起こるわけでもなく、いつもの道を、ヘッドホンで音楽でも聴きながらすすんで行く。
でもそんな”ありきたりな移動時間”に、声のするバイクが現れたら、多分、ヘッドホンは外したくなる。
このバイクに出会った人たちの「ただのつまらない移動時間」は、「面白くて、ちょっと前より安全な移動時間」へと変わった。
by ぱと